はじめに
ChatGPTに代表されるLLM(大規模言語モデル)は、コンピュータによる統計を元に、人間が作成した文書の非論理的部分や過去のパターンから未来をある程度予測します。また、予測された文書を引用することで情報を整理し、現状の分析や問題点の洗い出し、将来の予測を人間の言葉で提供するシステムです。そして、各社がLLM型のモデルを発表し、AIシステムが全てのクラウドやコンピュータシステムに今後取り入れられていくことが予想されます。
人と情報のUI
近年情報の入手元としてインターネット上にあるデジタルデータが多くを占めてきています、そして人と情報を結びつけるUI(ユーザーインターフェイス)には次のようなものがあります。
- 古典的なもの
- WEB
- 企業ホームページと呼ばれるもの
- デジタルマガジン的なサイト
- 有料情報サイト
- ブログ
- 販売目的サイト(Amazon、楽天、Yahooショッピング)
- 古いSNS(X、 facebook)
- podcastによる音声配信(デジタルラジオ的なもの)
- これらを束ねる検索サイト(Google、Yahoo)
- WEB
- 少し新しいもの
- 写真ベースのSNS(Instagram)
- 動画ベースの情報提供(YouTube)
- ファン向け有料ブログ(Note)
古典的なものから少し新しいものまで、全ての情報は基本的には消えることなく情報として取得することが可能であり、新しいもの古いもの、信頼性の高いもの低いもの、様々な情報が溢れています、これらを検索する為の仕組みとして検索サイトが存在しているわけですが、検索結果が上位だからといって自分が探している情報なのかはわからないのが現状です。
情報の取り出し方の変化が来る
先に述べたように、情報が肥大化し、類似する内容が乱立する中で、どのように情報を取得するのかを考えることが求められています。
スタイルの変化
多くの人々は、ネットでの情報探し以外でも「じっくり読んで考える」スタイルから「まず答えを求める」スタイルへと変化しているように思います。これは、世の中の物事の進行時間が短くなっていることに起因していると思われます。遅れをとることが「損失」であるという認識が根付いているためです。
このスタイルの変化は、悪い事ばかりではありませんし、ユーザーである人々がそれを好む以上は、そのスタイルを否定して「それはダメです」と言うのではなく、そのスタイルに準じたサービスや方法を提供しつつ、本来必要な人々が再び自分で考える時間を創り出すサービスを提供する必要がエンジニアである我々には必要だと考えます。
今後の社会的変化の中心へAIが来る
AIを否定する人も少数おられますが、AIは人を支配したり、人から全ての仕事を奪うものではありません。しかし、働き方や生活スタイルの変化をもたらす可能性は高く、既に変化は発生しています。
そして、生活スタイルの変化により求められるネットと人を結びつけるUIとしての役割にも変化が生じるでしょう
今後の変化の予測(既に進行しているもの)としては次のことが考えられます
- 従来型の情報検索サイトの利用頻度が下がる(AIが情報を要約した結果の部分で事足りる)
- AIへ必要な情報を質問し、AIの答えを人間がAIと共に検討を繰り返して目的へ到達するスタイル
- 画像や文書をAIに作成させて、その結果を人間が評価して公開する
このような変化が発生した結果として、例えばWEBのデザインについて考えてみましょう、デザインと言う言葉の中には「アート的」なデザインと、UIとしての「操作性のデザイン」があると思います、適材適所でこのデザインの使われ方が明確に分かれる時期が来ると考えます、デザインの中でもAIが利用しやすく論理的に誤りのないページをAIがピックアップするようになる可能性があります。(ただしデジタル版のデザインカタログのようなWEB情報は今後もデザインを重視して存続します)
今後、発信する情報はAIの知識のベースとなりうるものである必要があると考えます。
- 人間を相手に使っていたような文書のテクニックである繰り返しや過剰な表現から、論理的で整合性のとれた文書を発信する
- 論拠となるデータの開示
- 文書公開の意義(意味)、何を、誰が、いつ、なぜ、どうして、どうなる を考えて構成する
- 更に将来的にはタグのようなものを付加することでAIが誤認しないような共通の仕組みが必要になるかも知れません、それは例えば推論なのか既にあるデータなのか、人による未来予測なのかを明確にするようなものかも知れません。
企業としての情報発信
ここまで、情報の取得スタイルの変化から情報発信方法の変化が発生することをお伝えしました。その中で、情報として差別化でき、今後も一次コンテンツとして残る可能性が高いものがあります。それは、動画と音声による情報発信です。
当然ですが、AIの発達により動画や音声からもAIが情報を得る状況も考えられますが、人が喋る動画では発信者の熱意や語り口調も重要な伝達情報の1つなる為に、見る人への情報量が更に増えることで、アピール力が増加します、結果として動画の需要は今後も一定以上残り続けると考えます。
また、AIによって動画の内容が要約されて、動画へのリンクを提供するような紹介のされ方が逆に動画コンテンツの追い風となることも考えられます。今までは動画の概要欄等へ埋め込んだタグ等により動画への誘導を行っていましたが、今後はAIが情報を取得したい人にあった動画を紹介するようになると考えます。
動画の作成方法にも変化があるか
ただし、動画作成においても注意が求められると思います、それは動画の内容や作り方をWEBサイトのへか同様にAIが要約しやすいものにする必要があるかも知れません、長い動画よりも短めの動画が好まれるかも知れません、映像美よりも解りやすさが求められるかも知れません。
時代は常に変化しています、それぞれの時代に合った形に自己も環境も変化させつつ、本質を見失うことなく、我々はエンジニアの気持ちを忘れずに対応したいものです。
最後に、私が言うエンジニアとは、何も「工学博士」のような人のことではありません。だれかのために、誰かの役に立つものを「自分の能力で作成する人」をエンジニアと呼んでいます。ここで言う自分の能力とは、それぞれの分野の専門知識であったり、専門性のある能力のことです。つまり、事務員であっても情報を提供するプロとなればエンジニアと呼べるわけです。人々や社会、地球環境を壊すのも救うのも、エンジニア次第だと考えます。
株式会社コムワン 中村